今、まさに夕闇の中に富士山の姿が消えた。
街の灯りが連なり、その上に暗灰色の帯が重なり、明るく光るオレンジの夕陽色が西の空を染め、空は蒼い墨を滲ませるように今一日を闇へと導いて行くのであった。
今までオレンジの背中に堂々と我を見せていた富士山をも、この闇の幕には姿を隠すことになる。畏敬の念を抱きなから心は安堵する。
反対の真東を見れば、大きな微笑みが私を見ていた。いつの間にか、手を差しのべ、優しく夜へ連れて行くのである。
秋が明らかに来ていた。
仲秋の観月に手を合わせて私も微笑みを返した。
「明日天気になぁれ………」
南房総の帰り道でふと思ったのでした。
ありがとう。