人声久語(拾遺帖つづり)

世の中そんなに捨てたもんじゃないよ あんまり頑張らないで 捨てられるものは捨てて行きましょう

アンリトン ルール(Unwritten Rules)

大会屈指の剛腕、創志学園(岡山)の西純矢(2年)は敗戦が決まると、三塁ベンチでうなだれ、天を仰いだ。

彼は、投球もさることながら、投球後のガッツポーズが皆に知られることになる。

三振で雄たけびをあげ、チェンジで拳を振り上げ、パフォーマンス左の雄と言える。

また、卓球の張本君などもこのパフォーマンス右の雄と言える。


その左の雄、西君は今日、九回表に逆転され三回戦進出を阻まれたのである。

ふだんの自分の投球スタイルを出せずに苦しんでいたようなのだが敗戦後、西君はこんなことを明かした。

「試合の序盤の方でベンチに帰り際、球審から“必要以上にガッツポーズはしないように”と結構強めに言われました。でも、自然と出てしまうので」と。

高野連の事務局長によれば、「大会本部からは何も言っていない。審判独自の判断で注意したのでしょう」と話している。

そして「全国大会の甲子園でやるのはどうか。「アンリトン・ルール」というのもありますしね。国際大会ではやってはいけない行為でしょう」と付け加えた。

ガッツポーズは相手を侮辱する行為として戒められている。

日本の武士道精神にも反する態度だとも言えるのではと常々感じていたのだが。


アンリトン ルール(Unwritten Rules)となんだろう。


アンリトンルールは野球のルールに記載されていない選手間の「書かれざる規則」、「不文律」。

メジャー球界の野球規則には“書かれていない”選手が守らなければならないエチケットと考えればいいだろう。


相手への敬意を重んじるアンリトンルール。大リーグでは特に厳格に守られている印象だ。しかし、最後まで気を抜かない文化が残っている日本との違いで今までも多くの出来事が報じられる。

相手を顧みず、個人記録に執着するプレーは殊更(なおさら)に忌み嫌われるからだ。これらはアンリトンルールとして選手間に存在する暗黙の了解になるのだ。

「大リーグのアンリトンルール」とは、

1.大差がついた試合で勝っているチームはボールカウント3 - 0から打ちにいってはならない。
 大差とは、5~6点差がそれに該当するようだ。満塁ホームランでも追いつけない点差と理解すればよい。

2.大差がついた試合で勝っているチームは盗塁をしてはならない。

3.ピッチャーのノーヒットノーラン完全試合が継続中にバントヒットを狙ってはならない。

4.ピッチャーは死球をぶつけても謝ってはならない。

5.ピッチャーが打者を抑えたとき、派手なガッツポーズをしてはならない。

6.打者がホームランを打ったとき、塁間をゆっくり走ってはならない。

7.打者がホームランを打ったとき、派手なガッツポーズをしてはならない。

8.連続本塁打の直後の打者は初球を打ってはならない。


日本では大差がついても手を緩めない。それこそが敬意とする考え方も根強く残っている。

だから、高校生の屈託のないプレーに拍手を送り、劇的な展開も生まれることになるのだが。


打者に死球を与えた際、帽子を取り謝意を評する行為は日本では美徳とされており、礼節にかなった行為だと思うのだが、それをやると相手からなめられる事と教えられる。

日本プロ野球にも同様の不文のルールが存在する。日本では相手を敬う気持ちよりも礼儀を重視し、その場の空気や状況を読む意味合いが強いような気がする。

「日本球界」では、

1.大差がついた試合で勝っているチームは盗塁をしてはならない。

2.大差がついた試合でピッチャーが打者のとき、打席の後ろに立ち三振しなくてはならない。

3.イニング途中に交代されたピッチャーはイニングが終わるまでベンチ裏に引っ込んではならない。

4.引退試合のときには引退する打者にストレート勝負をしなくてはならない。

5.引退試合のときには引退するピッチャーから三振しなければならない。

6.キャッチャーからピッチャーへのサインを見て、二塁走者が打者に球種など教えてはならない。

7.アウトになった走者がマウンドを横切ってベンチに戻ってはならない。

少し違いはあるようだが、
「差別を許容し甘んじる米国人気質」
「強いものが正しいとする米国人気質」
、が多い中においても相手に対する敬意を感じるルールと言える。

本人に意識はなくとも、ガッツポーズは、やっつけた事に対する誇り、威張りにも通じているようで仕方がないのである。


高校生の精一杯の動きの中で、チームワーク、協同の精神など、野球の美点が尊重されるべきなのだろう。

ガッツポーズが「ひとり相撲」に映るのは私の思い過ごしか。


「味方のミスにも動じず、援護点には仲間を称え、勝った後、校歌を全力で、笑顔で歌う」こんな姿こそ、知らぬうちに拍手をしてしまう感動のシーンなのだろう。


最近、審判がいろいろ言われる中で、清涼感のあるニュースであった。


西君、大きくなって来年また勇姿を見せてくれ。

頼んだぞ!